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第4回 全身で夢中に遊ぶことが知的発達を促す

以下の文章は風土社発刊 チルチンびと31号
論)教育家族から生活家族へ/広木克行 の文章を転載しております。
以下の文章の著作権は㈱風土社に属します。

人間の脳とは、神経細胞が結合して発達していくものですが、6歳までとそれ以降とでは、発達の質が全く違うことも指摘されています

乳児行動発達が専門の小西行朗先生(東京女子医科大学教授)によると、前頭前野(※1)の神経細胞をつなげるシナプスは生まれた直後に急激に増えて、5~6歳までにピークに達する。
しかし、その後は減少し、20歳毎には大人と同じ数になるそうです、「シナプスは数を減らすことで、神経回路が無駄のない効率のいいものになり、脳を効率よく働かせることができる。
減少させるにも学習などの適度な刺激が必要なのだが、強い刺激を浴び続けると、無駄なシナプスの刈り込みが出来なくなる」(※2)

早期教育やテレビ、パソコンゲームなどのような「強い刺激」を与え続ければ脳のいびつな発達にもなりかねないということです。
乳幼児期には「シナプスの刈り込み」を妨げる強い刺激を与えないように子どもを育てる必要がありますし、運動神経と感覚器官をしっかり育て、バランスのとれた発達を保証することをめざさなければなりません。

子どもの体と心の発達を研究している正木健雄先生(日本体育大学名誉教授)は、人間の大脳の活動には興奮させる力とそれを抑止する(ブレーキをかける)力の二つがあって、そのバランスによって人間は自分の活動をコントロールしていると言います。
大脳を正常に発達させるには、乳幼児から10歳くらいまでは興奮する力を育てることが大事だとおっしゃっています。

一つのことに熱中して、一日中それに食いついて離れないくらいに興奮を持続する力を、子どもたちに育てることが大切だというのです。
友達と夢中になってかくれんぼをしたり、魚取りをやる。
そういう全身を使って、ヒトや自然と関わり、熱中して遊ぶ経験が、子どもの脳を発達させていくわけです。

更に重要なのは、脳の抑止する力は、興奮する力が発達するにつれて強まってくるという指摘です。
10歳くらいまでに、興奮する力を遊びなどの中で発達させてきた子どもは、今度は自分の力で自分の活動をコントロールするための、抑止の力を発達させるようになるというのです。
それに対して、夢中になって遊んだ経験の乏しい子は、抑止の力が弱くいったん興奮すると抑えが利かない。
ちょっとしたことで切れてしまって、泣きやまなかったり、友達に殴りかかってしまう。脳の持つ抑止力を引き出すためにも、熱中して遊ぶ体験は大切なのです。

※1「脳の司令塔」と呼ばれる。額のすぐ後ろにある部分で、思考や記憶、感情を制御する。
※2『AERA』2002年10月21号